ワインを少し感じる暮らし

アクセスカウンタ

ビールを飲む人々

<<   作成日時 : 2008/06/12 07:29   >>

トラックバック 0 / コメント 1

「ソムリエ職の人は普段どんなものを飲んでいるのですか?」という質問に答えて、 とあるセミナーでもお話をさせていただいたのですが、私の場合は、まず家に帰って最初はほとんど毎晩ビールから始まります。
 もともとは若いころは調理場で働いていたので、一日汗にまみれた後一風呂浴びて、そこでビールを飲んで、というように何の疑問も矛盾も存在しない完成されたパターンで暮らしていました。
 それが現在にまで続き、お風呂上りにビール、そこから何か興味のあるものを少し飲む、というのが私のゴールデンタイムなわけです。

 さて、フランス滞在を始めてまだ間もないころ、1997年ごろだと思いますが、年末のお休みに同じ職場のアイルランド人の同僚に「佐藤、年末はうちに遊びに来ないか? ダブリンの年末はとっても楽しいぞ!」と誘われて(あまり私は人の家に滞在したりというのは得意ではないのですが)海外での初めて迎える年末! ということもあり、「やはりここはヨーロッパ! せっかくのチャンスだし、なかなかにアイルランドに行くこともないだろう。そしてビールでも飲んでくるか! ギネス、ギネス!」と考え直し、飛行機に乗り込みました。
 着いたのが大晦日の夕方、まあ何とか彼の家に到着し、翌日はもちろんあけましての1月1日、午前中はだらだらと過ごし、お昼ごろから「それでは店が開くからさ、出かけるよ」みたいな感じで出かけます。着いた先には何やらいい年をしたおじさんたちが、これぞ所在無さげの見本みたいな感じで、20〜30人ほど店の前でたむろっているわけです。
 これはいったい何かしら? と思っていると、お店が13:00ごろにオープンになり、おじさんたちは「やれやれ、今日も1時かよ」といった感じで、わさわさと店の奥に入っていきます。

 そこはビリヤードに似ている“スヌーカー”というテーブルゲームのお店で「やっぱりここが一番落ち行くんだよ」みたいな感じで(でもそんなにニコニコはしていません)愛好家(?)のおじさんたちが濃い色合いのビールを片手に、黙々と台の上のボールを見つめ、そしてボールとお互いのため息をはじいています。
 場内の湿った空気と、みんなが口にくわえているタバコの煙、床からかもし出されている「これでも昔はワックスでした…」とは呼べないような油の香りがまざりあい、いまだにダブリンのビールといえば、切なさ溢れるこのシーンを思い出します。
 そこから日がな一日だらだらと、違うパブに行ったりといったいこれのどこが「とっても楽しいぞ佐藤!」なのかなとも、思いながらみんなの飲む量の多さに驚きながら、私の新年はスタートしたのです。
 今思うと、そんなにやることはないけれど、やっぱり正月は、国にでも戻ってゆっく過ごすかな、とこれが私を誘ってくれた彼の当たり前の正月休みだったかもしれませんし、そこには当たり前のこととして、のんびりセットとしてビールを飲まなきゃ始まらないだろうということがあったのかもしれません。
画像

 当時のわたしは、ワインの勉強はもちろん、ヨーロッパ各国の地元での飲み物文化みたいなことを、真剣に学ばなければと常に考え続けていて、そのときの旅行も、正直なんか身にならない旅だったみたいに感じてしまっていたのですが、あれから約20年経ったにもかかわらず、店の情景や窓の外を強風にあおられながら飛んでいるかもめの姿、湿った港の風のにおいなど、とてもリアルに思い出すことができるのです。
 例えば正月、私が地元にもし帰ったとしてもあまり行くところもないし、この年で鶴見緑地を自転車で走っても、なんだかなーといった感じです。
 それに比べると、彼なんかはダブリンに帰ればなんとなく行けるところがあるし、そこに行くと、まったく変わらない感じで時が過ぎていて、いつものようにビールを飲んで、玉をはじいて過ごしてと、そんな変わらない場所がたくさんあるというのが、ヨーロッパの飲酒の文化=ビールやワインが支えている伝統と呼んでいいところなのかもしれません。

テーマ

月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL


コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして!ビールを飲む人々のテーマにつられてお邪魔しました。たしなむ程度ですがお酒の持つ雰囲気が好きなんです。久々にさわやかなメッセージに嬉しくなりました。これからも読ませて頂きますね。良いお仕事を!
下町の旅人
2008/06/14 09:15

コメントする

ニックネーム
本 文